Case study
混雑の抑制で入居企業の満足度が向上。IoTを活用し密を防ぎ、お手洗いから価値創造に成功させた秘訣
東京建物株式会社 さま
今回は中野セントラルパークサウスを管理・運営する東京建物株式会社の佐藤様にお話を伺った。入居企業の満足度向上に力を入れる同企業が取り組む、VACAN AirKnock (以下、AirKnock)を用いたお手洗いから満足度を向上させるための施策とは。
導入サービス:VACAN AirKnock
導入箇所:お手洗い
インタビュー:東京建物株式会社 ビルマネジメント第二部 佐藤様
個室内への滞在時間を表示することでお手洗いの長居を防ぐというサービス設計になっているので、直接的に退去を利用者に迫るサービスに比べて苦情などが起こりにくい。
これまで感覚的なものが大きかったお手洗いのデータを定量的に可視化することができるので、既存業務の効率化や人員配置の最適化に生かすことができる。
お手洗いの利用データを分析することで、急病などによって個室内で倒れているといったリスクを自動的に検知するといった仕組みを構築。
お手洗いに行く前に混雑状況を確認できるようにすることで、利用者に空いているタイミングでの利用を促進し、待ちの発生を抑制する。また利用時間の現象もデータとして確認。
トイレという視認性の高い場所で利用者に対して情報をお手洗いの個室内にあるタブレットを通して配信することで、効果的に情報を届けられるようになった
お手洗いの利用データを分析することで、急病などによって個室内で倒れているといったリスクを自動的に検知するといった仕組みを構築。
ー導入したきっかけを教えてください
この中野サウスビルに限らずここ数年、お手洗いの混雑・待ちが問題になっていました。昔は女性が圧倒的に多い職場では、お手洗いの数に対して利用者が多いことで混雑するというパターンが最も多い課題でした。
しかしスマートフォンが広まったことで、その傾向が変わりました。スマートフォンではメールだけでなくゲームやニュースなども容易に見られるため、男女問わず絶対的にお手洗いの使用時間が長くなったように感じます。
当ビルでも特にここ直近3年は同様のクレームが多くなっており、衛生学会の指標に従って利用者数に対して適切な数以上のお手洗いを設置しているにもかかわらず、混雑が起きてしまうという状況でした。
そこでお手洗いの数以外の解決方法が必要ということになり、IoTなどを活用したサービスを使って解決できる方法をいろいろと探してきて、比較検討しました。そのなかで、バカンさんから提案してもらったのが、AirKnockを初めて知ったきっかけです。
ーバカンのサービス以外にはどのような方法を検討されましたか?
バカンの他にもお手洗いの個室内に長居しているとドアの中や外に設置したランプが光るといった、直接的に利用者に混雑を伝えるサービスなども検討していました。しかしそれは流石に訴求方法がダイレクトすぎ、安心感や快適感にマイナスの影響が大きいと言った意見が多かったため、最終的には好ましくないといった判断になりました。
他にも、個室の中にシールなどで長居を防ぐような「スマホの利用はお控えください」という掲示をしたり、お手洗いの外にベルを置いて混んでいる場合は中の伝わるように鳴らしてもらう仕組みを導入したりなど、アナログな方法の導入も考えていました。
しかしシールを貼っても目に見える効果は確認できず、むしろ個室内の美観が損なわれるといった課題が生まれてしまったり。またベルの方式も他のビルでは実際に導入されている所もありますが、押す人も押された人もストレスを感じるといった意見が多くでたため、この方法も広まることはありませんでした。
そう言った背景もあり、利用者の自主性を刺激することで長居を防ぐといった機能性やお手洗いの景観を大きく行わない機能性の観点でAirknock の導入を決めました。
ー導入した理由を教えてください
理由は3つあります。
1点目は、AirKnockは個室の中のタブレットに滞在時間を表示することで、人の善意で長居を防ぐような仕組みになっています。利用者への長居防止の圧が強すぎない点によさを感じました。
2点目は、お手洗いの使用データなどがわかる点。これまで平均的な使用時間や利用されることの多い時間帯といった利用者の傾向は感覚的な部分が多く、ブラックボックスになっておりことが少なからずありました。しかし、導入することで正確にそう言ったデータを把握できるようになります。業務の効率化や人員配置の最適化にそういったデータを活用できると考えました。
3点目は後付けでデバイス等を設置した場合も、お手洗いの美観を損なわないという点。建物を運営・管理する側としてお手洗いの意匠性を損なわないかどうかは重要な要素です。その点、AirKnockはステッカーなどを貼るのに比べて安心して設置ができました。
ー導入する際に注意していた点はありますか。
利用者に退出を促すサービスということで、クレームなどがくるのではという不安はありました。しかし、導入してから今のところ苦情などは来ていません。
またタブレットを設置するので「カメラが付いているのでは?」といった心配をされる方がいらっしゃるのではといった懸念もありました。しかし、カメラが付いていないことをタブレット内のコンテンツなどで利用者に伝える仕組みになっていることで、こちらも問題になったことはまだありません。
ー導入後の効果やメリットを教えてください
やはり最も大きいのは、利用者が混雑を事前に把握できるようにすることで「行ったけど空いていなかった」ストレスを減らせること。そして、個室内での長居を抑制できていることですね。
お手洗いの混雑によって近年は入居者の建物に対する満足スコアが顕著に下がってしまうなど、毎年私たちにとって悩みの種となっていました。しかし導入されて以前と以降を比べてみると、満足度調査の数値が明らかに改善してきています。
実際に使用時間のデータを見てみても利用時間のピークが短い方にスライドしてきており、お手洗いの回転率が上がってきています。
またもう1つは、お手洗いにおける安全性の向上です。お手洗いは外から中を見ることができないため、個室の中で何が起こっているかがわかりません。トラブルが起きた場合に備えて緊急連絡ボタンを設置するなどしていますが、本当に体調が悪い時などは押せない場合も少なくないと思います。
しかし今回の導入で利用時間が一定時間を超すと自動的に管理者に連絡がいくため、急病などのトラブルが発生してしまった場合も確認が容易になります。
ー情報発信の点ではいかがでしょうか。
お手洗いタブレットを通して情報発信できることの最大のメリットは、入居者に対して直接施設側からのお知らせを効果的に伝えられることです。
これまで施設側からのお知らせを入居者に伝えるには、入居者の総務担当の方に取り次いでいただき、担当者の方から伝えていただく方法がほとんどでした。
1つの入居企業に対して周知を依頼するのはそこまで労力はかかりませんが、すべてとなると手間がかかります。また企業の総務にも負担がかかってしまうので、頻度や配信タイミングなどの調整が必要でした。
そのため高頻度で情報を伝えたかったり、重要度が高くない施設内のイベントなどを周知したりする場合は、エントランスなどにおいたデジタルサイネージなどを使って情報発信をするといった方法しかありませんでした。
また総務を通して情報を伝えてもらったとしても、どの程度社員の方に見ていただけているのか把握するのが困難でした。皆様も経験があるかもしれませんが、メールや紙などで施設からのお知らせを送付いただいても、業務が忙しかったり他の連絡が増えてしまうことで確認が漏れてしまうこともありますよね。
デジタルサイネージにしても、エントランスにおいてもなかなか視認してもらえないといった課題があります。入居企業の情報を伝えるというのはこれまで特に弱かった分野。新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、紙を配るなどの施策は衛生的な観点からあまり好ましくないといった課題も出ていました。
その点お手洗いはオフィスに出社すれば多くの人が1日1回は使うので、情報を見ていただける可能性が高いですし、個室というプライベート空間を活用しているので認知という点でも圧倒的にメールや紙に比べて情報を届けやすいです。また情報の配信も管理者側でコントロールできるので、入居企業の総務にも手間をかけることはありません。
見る人にとっても、アプリを開いたりWebページを見たりするのと違い、お手洗いという日々の生活導線を過ごすだけで情報を得られるので、負担もほとんどありません。
ー今後AirKnockを使ってやってみたいことはありますか。
入居企業の方に向けてコンサートやパーティー、交流会などのイベントを月1回程度やっていたので、その情報周知にぜひ活用したいと考えています。イベントを知ってもらい参加者が増えることで、建物内での交流を促進していきたいです。
またアンケートや避難訓練などの情報の配信もしてみたいです。とくに避難訓練などは災害時に命を守る上でも重要な情報なので、1人でも多くの入居者の方に届けられるように、お手洗いという新しい情報発信の場所を活用していきたいです。
また管理者だけでなく、入居企業側にもタブレットを活用していただき社内報を流すといった使い方は十分考えられます。これまでは社内報や自社の情報を社員に伝える手段を尋ねられても、デジタルサイネージくらいしか選択肢がありませんでした。
他にはエレベーターを使った情報配信もありますが、どうしても見てもらえる時間が短いため情報をお手洗いほど伝えられなかったり、不特定多数の方が見るため特定の企業の情報のみを配信したりすることはできません。
その点、お手洗いはフロアごとに指定して流せば適切な情報を特定の人に配信することができます。これは入居企業にとって魅力的な選択肢ではないでしょうか。
ーデータを使った施策案などはありますか。
私たちはデベロッパーなので、新しいビルを建設する時にAirKnockで得られたお手洗いデータを活用することで、最適な個室数や導線設計などを決めるといった活用方法も考えています。
入居企業の種類・属性と滞在時間の傾向などのデータを紐付けられれば、それを元に適切なお手洗いの個数などを見つけることもできるのではないかと考えています。
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