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Column 2021.09.07

待ち時間はお客様の満足度に影響する?

どこかお店や窓口で行列に並んだことはありますか?最近は席を間引いて間隔を広くとった結果、以前よりも行列が発生しやすくなっているお店も増えています。お客様が多い分には構わない、待たせてもよいだろうという考え方もあります。一方、混んでいるということ自体に抵抗感をもつ方も増えています。

待ち時間の評価はサービス全体の満足度に影響する 

感覚的には、お客様をお待たせすると満足度が下がるような気がします。一方で、「待たされるけど、いい店だ」という評価のお店も世の中には存在しますし、話題性などを狙ってわざと待たせるお店もあるといいます。実際のところ、お客様を待たせることによる満足度への影響は、あまり考慮しなくてもよいのでしょうか?

 結論から言えば、学術的な調査では「顧客の満足度は、企業に対する満足度に影響する」ということが明らかになっています。したがって、満足度は待ち時間やサービスなど各パーツで独立しているというよりも、どこかが下がるとお店全体についての満足度も下がると考えたほうが自然です。そう考えると、わざわざ「待たされるけど、いいお店」を目指すよりも、そもそも待たせないお店を目指すほうが、高い評価を得やすそうです。また、混んでいること自体が以前よりネガティブに捉えられがちな昨今では、なおさらでしょう。

待ち時間の評価には何が影響しているか 

待ち時間の評価を上げる、または下げないようにするにはどのような方法があるのでしょうか。これまで行われた学術研究を見ると、大きく「待つ環境」と「待つ方法」の2つに分けて考えられるといいます。

どのような環境で待っていただくか

一つは、待っていただく環境をどのようにつくるかです。例えば、行列ができている場所に音楽を流したり、待合室にテレビを設置したりするなど。行列ができてしまったのは仕方ないとして、待っていただいている間のストレスをどう軽減するかという観点での取り組みです。既に取り組まれているお店も多いのではないでしょうか。

どのような形式で待っていただくか

もう一つは、待っていただく方法です。具体的には、待つ行列を1列にするか、複数列つくるか、どこに並んでもらうか、などです。「待ち環境」は感覚的に理解しやすいため、以下こちらの「待ち方法」について詳しく説明していきます。

高評価には公平性を感じてもらう行列の管理が必要

行列に先に並んだ人が先に呼ばれる重要さ 

待ち時間の満足度には、公平感が強く影響するとされています。非常に当たり前なことですが、先に並び始めた人が先に呼ばれるべきということです。

いや、そんなこと簡単じゃないかと思われるかもしれませんが、意外とうまくいっていない場面も多いものです。例えば、スーパーのレジのように複数の列があってそれぞれの進み方に差がある場合です。「あっちに並べばよかった…!」という体験は誰にでもあると思います。また、お店によっては予約のお客様を並んでいる方より先にお通しする場面もあるでしょう。「こっちが先に並んでいたのになあ」という気持ちになりがちです。

こうした公平性が侵されたという認知がされると、待ち時間の評価に負の影響を与えることがわかっています。

スーパーのレジ待ちは「あっちに並んでおけば…!」が起こるケースの典型

公平性が「侵害されるかも」というだけでも評価には負の影響がおこる 

また、過去の研究ではやっかいなことに、実際に公平性が損なわれたかどうかだけでなく、「損なわれるかも」という懸念があるだけでも待ち時間の評価に負の影響があることがわかっています。「なんだか隣の列のほうが進みがはやそうだ…」ですとか「ちゃんと待ち順の管理されているのかな」といった不安があるだけでもよくないということです。したがって、どのような場所に、どう列を作って待っていただくかを考える段階から対策をする必要があります。

公平性が侵されていると感じさせない待ち順の管理が重要

他の行列が目に入らないような環境にしてしまう 

待ち時間でお客様の満足度を下げづらくするためには、他の列が見えないような並ばせかたをする方法があります。並ぶ場所を工夫したり、衝立を使うなどしてもよいですし、前述の通り行列に並んでいる方が見られるようテレビを置いて注意をそらすなどが考えられます。ただ、場所の制約からなかなか難しいケースもあるでしょう。

待ち順・受付管理をデジタル整理券で行う 

より強く公平性を担保するためには、整理券を使う方法があります。この際、デジタル整理券システムを使用すれば、その場に行列を作らなくてもよくなるため、より根本的な解決方法とも言えます。

店頭にタブレットを設置して待ち順・受付を管理

デジタル整理券システムは、受付・待ち順の管理をお客様のスマホと組み合わせて行い、順番が近づくと通知を受け取れるようにすることで、待ち時間の間はその場を離れてもよいようにするものです。昨今の行列が嫌われる状況下で、導入されるお店が急増しています。整理番号発行は店頭に置いたタブレットなどから行いますが、主要なサービスでは紙の整理券も発行できるので、スマホのないお客様が困ることもありません。

店頭タブレットを操作する以外に、指定のURLにアクセスして店頭に到着する前に整理番号を受け取ることもできます。これはオフィスビルやマンションの下層階にある飲食店や、クリニックなど、繰り返しご利用になるお客様が多い場所で効果が発揮される機能です。

VACANでも、デジタル整理券による待ち順・受付管理システム Q ticketを提供しております。詳細はこちらから御覧ください。

[参考文献]
青山温子、中島望(2011)「隣の列は気になりますか?ー待ち行列の形態と待ち時間がサービス評価に及ぼす影響についてー」『大阪大学経済学』第61巻第1号
Underhill, Paco(1999), Why We Buy: the science of shopping, NY: Simon & Schuster. ( 邦訳:鈴木主税(2001), 『なぜこの店で買ってしまうのかーショッピングの科学』, 早川書房 )